酸塩基平衡の基礎~酸塩基平衡を保つためのしくみ~

Ⅲ 緩衝系とは

Ⅲ 緩衝系とは

 Hは、きわめて反応性が高いため、そのままにしておくとタンパク質と反応し、機能不全を起こしてしまう。外部への酸の排泄は肺と腎臓が担うが、その反応は速くない。そこで、発生したHをとりあえず安全な形に変えることでpHの変化を最小限に抑え、酸が体外に排泄されるまでの時間稼ぎをするのが、緩衝系の働きである。
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●緩衝作用

緩衝作用は、弱酸と弱塩基のペアによってHの濃度変化を最小限にとどめることにより発揮される。「酸はHを与えることのできる物質であり、塩基はHを受け取ることのできる物質である」との定義に従うと、この関係性は式(1)で表される。

                [弱酸] ⇄ [H] + [弱塩基]・・・・・・・・・・・(1)


この状態の時に強酸が加わり、Hが増加すると、弱塩基はHと結合して弱酸を産生〔式(1)の左向きの反応が促進〕し、
H濃度の上昇(pHの低下)を緩和する。
一方、強塩基が加わった場合には不足したHが弱酸から供給され、H濃度の低下(pHの上昇)を最小限に抑える〔式(1)の右向きの反応が促進〕。
 
生体内における緩衝作用はいくつかの緩衝系の働きによるものであり、生体の恒常性を維持するうえで重要な役割を担っている。
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●血液の緩衝系

血液の緩衝系としては、炭酸-重炭酸緩衝系、ヘモグロビン緩衝系、血漿タンパク質緩衝系、リン酸緩衝系などがある(図3)。このうち、炭酸-重炭酸緩衝系が血液pH調節に最も大きく関与している。

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炭酸-重炭酸緩衝系
HCO3は、H負荷によりCO2と水に分解され、肺でCO2を排出する。また、腎臓ではHを実質的に排泄し、消費したHCO3を再生できる。このような長期的な緩衝システムがあることは、生体内で重要な意義を有している。


ヘモグロビン緩衝系
酸素親和性を有し、肺から各組織へO2を運搬し、組織で産生されたCO2を運ぶ役割があるほか、生理的pH範囲内で高い緩衝能をもっている。
赤血球内には、炭酸脱水酵素(CA)が豊富に存在するため、CO2は赤血球内で速やかにHCO3に分解される(図4)。


血漿タンパク質緩衝系
アルブミンとグロブリンが主となるが、1つの分子内にカルボキシル基やアミノ基を有し、生理的pHでは多価の弱酸として緩衝作用を示す。


リン酸緩衝系
リン酸自体の緩衝作用はHCO3よりも強いが、血液におけるリン酸濃度が低いため、緩衝作用に占める役割は小さい。しかし、細胞内ではリン酸濃度が高く、細胞内pH調節に果たす役割は大きいことが知られている。


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