酸塩基平衡の基礎~酸塩基平衡を保つためのしくみ~

Ⅰ 酸、塩基とは

血液のpHは、pH7.40±0.05という非常に狭い範囲のなかで一定に保たれており、これは生命を維持するシステムの中で非常に重要なものである。この章では、生体内で酸・塩基のバランスを保ち、pHを維持することの重要性について触れる。
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酸、塩基とは

酸、塩基の定義には様々なものがあるが、体内の酸塩基平衡を理解するにあたっては、Brønsted(ブレンステッド)の定義が重要である。

Brønstedの定義 : 酸はHを与えることのできる物質であり、
             塩基はHを受け取ることのできる物質である
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酸塩基平衡

酸性とアルカリ性をバランスの良い状態に保とうとすること(または保たれている状態)を酸塩基平衡という。生体内の酵素は特定のpH条件下で活性が最大になるため、pHが正常範囲から逸脱すると酵素活性が低下して代謝が円滑に働かなくなり、生命が脅かされる。そのため、酸塩基平衡により生体内のpHを常に一定に保つことが重要である。
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血液pHと細胞内pHが異なる意義

細胞内のpHはほぼ中性(pH7.0)であるが、細胞内で産生される有害な代謝物のほとんどが酸性の物質であることが知られている。細胞外液や血液のpHは7.40とアルカリ性に傾いており、酸性の代謝物が細胞外へ移行しやすい仕組みとなっている(図1)。これは、一見すると小さいpHの差のようであるが、H濃度に換算すると、pH7.40は40nmol/L、pH 7.00は100nmol/Lとなり、細胞内外でHの2.5倍の濃度勾配が形成されている。人間以外のほとんどすべての動物でも、細胞外が細胞内に比べてアルカリ性に傾いており、この有害代謝物の排出機構は生体機能維持に重要と考えられている。
なお、細胞外から細胞内へのHの取り込みはこの濃度勾配に逆らうため、Hは拡散によって細胞内に入ることができず、細胞内のカリウムイオン(K)と交換でHを取り込む仕組みなどが用いられている。そのため、HとKはお互いに影響を与え合い、血液のpHの変化が血清カリウム(K)値に影響を与えることがある。とくに、Kはそのほとんどが細胞内に存在しているため、血清K値はごく低濃度で調節されており、酸塩基平衡が与える影響は大きい。
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