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Ⅰ 静脈血や生化学検査からわかる酸塩基平衡異常
血液ガス分析とは、血液中の酸素(O2)や二酸化炭素(CO2)などの濃度や比率、血液のpHを分析する検査であり、呼吸状態と酸塩基平衡状態を知ることができる。ときに、動脈血採血が必須であると考えられがちであるが、簡易指標としては静脈血液ガス分析も有用であり、プライマリケアや経過観察では、静脈血でも十分なことも多い。特に、代謝性因子(腎臓)による酸塩基平衡異常の把握には静脈血採血で十分である。
血液ガス測定における動脈血と静脈血の使い分け
pH、PCO2、HCO3-は動脈血と静脈血がパラレルに動いており、簡易評価として静脈血も有用である(呼吸器疾患の初期評価として重要なPaO2を評価する場合には、動脈血での測定が必須である)。特に、動脈は静脈よりも深部に存在するため、採血が困難であるだけでなく、患者の疼痛・不安を伴うため、静脈血液ガスとの違いを把握した上で、静脈血を使用してもよい場合が多い。なお、一般に動脈血に比べ静脈血の方がHCO3-濃度が高い。これは、静脈血中にCO2が多いために、平衡状態を表す式(下記)が右に移動しているためである。どの程度の差があるかについては、表1を参照した上で、静脈血ガスを利用する。
生化学検査(電解質異常)から酸塩基平衡異常に気づく
酸塩基平衡異常の診断には血液ガス分析が必要であるが、血液ガス分析機がなくとも、静脈血によるルーチンの生化学検査を用いて、ある程度酸塩基平衡異常を予測することができる。その1つが、「[Na+]-[Cl-]=36」の関係である。Na+、Cl-はそれぞれ体内の主要な陽イオン、陰イオンであり、HCO3-以外のイオン濃度が変化しないと仮定すると、血清Cl-値が代償的に上昇するため、高Cl 血症や[Na+]-[Cl-]の変化で間接的にHCO3-濃度の変化(つまり代謝性アシドーシスの存在)を予測できる。